ジャガーノート

本や音楽の話を書いていこうと思います。

春のビーチコーミング(瓶、缶、骨、外骨格など)

ビーチコーミング(Beach combing)

海岸などに打ち上げられた漂着物を収集の対象にしたり観察したりする行為。

Wikipediaより)

 

雪が降った翌日に急に気温が上がったせいなのか、夜中は突風が吹き荒れていました。札樽自動車道は横風注意報が出ていて、油断すると車体が軽々と流されてしまう有様です。F-ZEROのステージ4、DEATH WINDさながら。

いっそスーパージェット(あの超加速するやつ)で風を突っ切ろうと思い、車のターボスイッチみたいなやつをオンにすると、運転の難易度がグッと上がってほんとに死ぬかと。ハードモードはゲームだけで充分ですよう…。

 

強風などで海が荒れると、浜の漂着物が増えるそうです。そのため日本海側のビーチコーミングは、海が荒れやすい冬がおすすめとされている。だがしかし、どれだけの本気度かによるとは思いますが、正直、冬の日本海に立てますか?仕事だとか仕事絡みの釣りだとか(やったことないけど)、のっぴきならない理由があれば別だが出来れば避けたい。だってあの東映のオープニングみたいな波が氷点下5°Cとか10°Cとかの中で襲い掛かってくるんですよ。ふつうにいやですよ。

 

ところが。

ある日ツイッターで、「ビーチコーミングカニの化石を拾った」という方の呟きが流れて来た。

 

カニの化石。

 

このワードだけで物欲を突沸させるには充分。ツイートに添えられた、手のひらにカニの化石をころりと3個のせた画像がめっちゃいい。どっからどう見てもカニそのもの。クリーニングなしであんな状態のものが落ちてるなんて。しかも3つも。近所の海でも探せば見つかるんじゃないかという期待が高まります。なんせこの星の海はひと続きだからな。

 

ちょうど週末に風も落ち着いて気温も上がり、天気もすこぶる良かったので海に行って来ました。

目指すはカニカニ化石です。

 

 

 

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引き潮だった。テトラポットまで歩いて行けるよ。よじ登って向こう側を眺めるチャンス。だが大人なのでそんな無茶はしない(近寄ると意外と高さがあったのであっさり諦めた)。

そう、この辺はテトラポットがたくさんあります。波だけでなく漂着物も遮られるので、ビーチコーミングはポットの合い間を狙って行きます。

 

 

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敷居。鴨居かも。

 

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丸太。もったいない精神と工作欲が刺激されるが我慢。

 

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謎の漂着物。

ぱっと見は笛かと思ったけど、焼き物のようです。しかも円筒ではなくて、トンネル型というか、断面がU字型の物体でした。太さはアルトリコーダーぐらい。形もきれいに保たれているし、埴輪とか土偶とか言い出すほど古いものではないようですが。20世紀の海の道具でしょうか。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただきたいです。

 

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カニの甲羅。あとで同定しよう。とりあえず写真だけ撮る。

 

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ビールの樽。

2、3個転がってたけど、この銘柄見慣れないな。。

 

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こんなのも。

 

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あ。この人をなめ腐ったようなツラ構えは。

プルタブ取れる世代の缶じゃないか。道理で見慣れないわけだ。

 

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…お前ら一体いつの時代からやって来たんだ。

 

 

アンティークな小瓶などのいかしたものは見当たりませんでしたが、こういう拾うまでもないけど、今となっては珍しいものがゴロゴロ落ちてる。この玉石混交具合がビーチコーミングのおもしろいところ。最初に見つけたときは物珍しさに興奮するものの、エンカウント率が上がると一気に興味が失せていく。上に挙げた漂着物も誰かにとってはお宝かも知れません。興味が失せた物を持って帰ってもゴミになるだけなので、写真だけ撮ってブツは置いて帰る、ショット&リリースもひとつの選択肢です。

 

 

 

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おお。骨だ。

イルカの脊椎かな?まだ新しい。赤みが残っていたので、持ち帰るかどうかめっちゃ迷ったけど結局リリース。頭骨もあるかなと思って辺りを探してみたけど、流れ着いた骨はこれだけだったようです。

 

 

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謎の漂着物その2。

なにこれ??全然わからん。

節があって、

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真ん中に穴が空いてる。

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植物かなあ?……それともなんかの脊椎??まさかな。

大きさは直径13〜15cmぐらい。

これもどなたかご存知であれば教えてください。

 

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iPhoneが勝手に色補正してムダにいい感じに。これがインスタジェニックというやつか。

 

 

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またカニだ。さっきのと同じ種類。

脚が3対しかないように見えたので、タラバガニの仲間なのかなと思ったけど、甲羅の形が違う。ネットで「タラバガニの子供です!」って紹介されてるのもあったけど、掲載されてる写真では思いっきり脚が4対見えてたし。。

子どもに借りた図鑑とネットを併用して調べたら、どうやらヨツハモガニらしい。ちぎった海藻を身に付けて擬態する習性があるそうです。それで先に見つけた甲羅にも海藻が付いてたのか。

 

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思いがけずかっこよく撮れてうれしい。

小さいのにゴツゴツ、トゲトゲしてていいですよね。爪も太くて立派。なんかいろいろ調べたおかげでヨツハモガニ好きになっちゃったな。そのうち生きてるやつも探してみたい。

 

 

 

 

……って化石のことを完全に忘れてた。

 厚田の海岸でカニの化石が見つかるという情報を入手したので、そっちで探した方がいいかも。

 

 

カニの同定の際、参考にした図鑑はこちらです。

DVD付 水の生き物 (学研の図鑑LIVE)

DVD付 水の生き物 (学研の図鑑LIVE)

  最近の図鑑は写真がきれいでうらやましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ。

海を望む家。

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柵の上にハシゴが乗っかってるように見えるだろ?

事実、柵の上にハシゴが乗っかってるんだよ。

 

1段目にすら足を掛けられる気がしない。

 

 

 

シャクルトンの大漂流

冒険のあらゆるエッセンスがすべて詰まっている。

石川直樹(写真家)

 

 

シャクルトンの大漂流

 

 「シャクルトンの大漂流」

全72ページの大作である。文字は小さめで、ふりがなも少ない。小さな子がひとりで読むのは難しいかも知れない。そもそも、あまりこども向けに書かれているようには見えない。

 

ストーリーは意外にも資金集めから始まる。いきなりお金の話。次に隊員の募集、面接の様子と続くドライな要素に、浮き足立った気分は肩透かしを喰らう。

 だが続いて見開きで隊員の一覧がある。このページには何度も立ち帰ることになると思う。何せ登場人物がべらぼうに多い。人名が出るたびに「この人、なにやってる人だっけ?」ってなる。28人の隊員一覧から目当ての人物を見つけ出すのは、ちょっとしたウォーリーを探せ状態だ。そして見返すたびに新たな発見があるのが楽しい。「そういえばこの人、こんなアイテム持ってたな」とか、「このパーティーは○○スキルが高いメンバーを抜擢したのか!」とか。

 

 デフォルメの効いた絵でありながら、道具や持ち物、船の構造まで、こまごまと描き込まれているのがおもしろい。南極でのなごやかな日常も魅力的で、ちょっと『十五少年漂流記』を思わせる。

 

 圧巻なのは、見開きで描かれる大自然の臨場感。視点を自在に操るような見事な構図は必見だ。ぶ厚い氷が埋め尽くす海や黒い嵐に、氷と船の軋む不吉な音を想像してしまう。

本を閉じることで物語の過酷な状況から逃れ、平和な現実に帰る安堵の感覚が好きだ。かつて『刑務所のリタ・ヘイワース』や『イワン・デニーソヴィチの一日』の合間に燻らせた煙草を思い出しながら、そっと絵本から目を逸らし、深呼吸をする。

 

膝に乗せたこどもにせがまれ、ページをめくる。続きが気になって仕方がないのだ。結局、一気に読み終えてしまった。

 

 

この絵本を読んで感じるのは、作者ウィリアム・グリルの作品に対する生真面目さだ。絵も文章もとても丁寧で、丹念な取材が想像される。造船の大工道具ひとつ取ってもこんな様子なのだ。

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こまかい。

 

B4版の大きな紙面を活かし、迫力の見開きを繰り広げたかと思えば、上のような資料的なイラストを仔細に並べてみせたりする。このような絵のダイナミクスは、本書の大きな特徴のひとつだろう。

もう一点特筆したいのは、青がとてもきれいなこと。タイトルや見出し文字の微妙なグラデーションがなんともかっこいい。

絵と文とのバランス感覚も絶妙で、絵で示すこと、文で記すことの選択がうまい。情報量が多いのに簡潔、という新感覚。絵本でこんな表現が可能だったのかと思わせる一冊。

 

 

これがウィリアム・グリル初の絵本だって。

天才か。

 

当然おすすめです。

 

 

電気のピアノにお掃除ロボット

「エレピあったらよくない?」っていう話を友達が振ってきた。エレピか。ずいぶん唐突だな。

「ローズとかウーリッツァーとか、中古が意外と安いんだよ。エレキギターなんかは、ギターもアンプもペダルも、って集めていくとけっこう高いじゃんか。でもエレピはモデルによってはもうそれ1台で完結するからさ」

なるほど。確かに一理ある。検索してみると20〜30万円ぐらいでゴロゴロ落ちてる。いやいや、趣味で使うには高えよ、と思う方もいるかも知れないが、ちょっと考えてみてほしい。

これは本物なのだ。レコードで聴ける、本物のエレクトリックピアノの音なのだ。アンプとスピーカーを搭載しているモデルを選べば、弾いたらすぐあの音が鳴るのだ。目の付けどころがシャープ過ぎる発想だと言わざるを得ない。

 

そんな話をしていたら、もうあっという間に頭の中はエレピで満たされた。エレピが居間にあったらどうだろう。差し当たってはフェンダーローズとか。

壁際に置いてみる。アップライトピアノよりは奥行きがあるだろうか。楽器でありながら家具のようでもある、独特の存在感。本体から伸びたクロームメッキの脚の間をルンバがちょこまかと通り抜ける。電気のピアノにお掃除ロボット。いつか誰もが夢見たようなレトロフューチャー

エレピ教室から帰ってきたこども達が、覚えたばかりの曲をさっそく連弾してみせる。ベンチソファの左に座った長男が、歪んだ和音をリズミカルに弾ませた。『レディ・マドンナ』だった。右側に腰掛けた弟は、床に届かない足をぶらぶらさせながら、主旋律を弾いている。節を間違えるとおもちゃみたいに笑う。兄も、つられて笑う。その様子を後ろから眺めていると、鏡面仕上げのコントロールパネルに二人の顔が映り込んでいるのが見えた。

 

楽しそうじゃん。めっちゃ楽しそうじゃん。

 

 

エレピのけっこう魅力的なポイントは、いちおうナマ音が鳴るところだ。どんな音なのか聴いたことはないんだけど。あとは外部出力もできるところ。ギター用のエフェクターも使えそうだし。

 

手始めにトイピアノにパッシブピックアップを取り付けて、エレピ化出来ないかと妄想していたのだが、目を付けていたカワイのトイピアノの発音体がアルミパイプだと知ってがっかりしているところだ。アルミじゃダメなんです!磁性体じゃないとマグネティックピックアップで拾えない。じゃあピエゾでいいかと言ったらそれもダメ。鍵盤のカタカタ音ばっかり拾いそう。発音体としてスチール製グロッケンを流用しようかとも考えたんだけど、けっこう高いし、メーカーもあんまり選択肢がない。

これはもう作るしかないだろうと、簡素なミュート機構を模索中。たぶんミュートできた方がいろいろ使えそうな気がする。

 

ウクレレみたいに、小さいけど楽器として一人前っていうものが出来たらいい。

 

エレピの好きな曲として、とりあえずノラ・ジョーンズを貼っておきます。ノラはウーリッツァーを愛用しているそうです。

FEELS LIKE HOME

Norah Jones - What I Am To You - YouTube

 

アルバムの2曲目だけど、映画の終わりみたいな雰囲気がすてきです。

 

ダチョウの卵と好奇心の部屋

ダチョウの卵を手に入れました。

母が「孫のために」と買いに行ったのですが、下の子も欲しがると思うから、ということで2個届いた。。

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ダチョウの卵1個で鶏卵20個分の量があると言われています。つまりダチョウの卵2個で、鶏卵40個分の量があるわけです。てことはこの写真1枚に鶏卵41個分の量があるんですよすごくないですか。

重さは1個1.5kgぐらい。この量はヤバい。

有精卵だから日持ちするよ、とダチョウ牧場のおじさんが言ってたけど、ナマモノなのでなる早で食い切りたいところです。週末に意を決して割りました。

めずらしいことなので、ちょっとその割り方などを記録に残そうと思います。

 

 

まずは流水で卵の表面を洗います。雑菌とかこわいので、仕上げに水の劇落ちくんで除菌する。

 

余談ですが、我が家は田舎ぐらしなので、水道が引かれていません。なので、水は地下水を使用しています。地下水生活が長いと、水道の塩素のにおいにとても敏感になります。洗濯物なんかも、水道水で洗ったものは洗剤の香りの奥に塩素のにおいを感じる。消毒されてるなーという涼やかな清潔感があって、好きなにおいです。ないものねだりなんだろうけど、蛇口をひねるだけで塩素入りの水が出てくるのはかなり便利だと思います。

加湿機も、地下水だと雑菌がわくので使えません。地下水にわざわざ塩素を足して使っているんだよ。。めんどくさいよ。

ついでに書くと、塩素のない地下水生活で肌や髪が健康になった!みたいなことはまったくありませんでした。もともと家族全員、肌が弱いのですが、ことさら改善もせず悪化もせず。塩素除去機能のついたシャワーヘッドとかもあるけど、うちは引っ越しても使わないかなー。水道水の残留塩素程度だったら肌には全然影響ない、というのが実感です。

 

さて、話を戻して。

 

まず、穴を開ける位置を決めます。スマホのLEDライトを卵に直付けすると、気室が透けて見えます。気室を上にして、卵を小さいボウルに固定します。

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各種得物を取り揃えまして、どうやって穴を開けようか検討。

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1.千枚通しを金槌で叩いて、卵に小さなキズを付ける。

2.ドリル。

の手順が楽かなー。

活躍したのは愛用のBosch IXO。以下の記事で紹介しています。

Bosch IXO バッテリードライバー - ジャガーノート

 

6mmのドリルを使いました。貫通するのにけっこう時間がかかります。

 

さて、穴が開いたらもう写真を撮っている余裕はありませんでした。以下、文字のみです。

中身を取り出すために大きめのボウルを用意します。大は小を兼ねます。家中でいちばんでかいボウルを使いましょう。脅すわけではありませんが、どんぶり程度の大きさだとあふれるかも。

卵の穴を下に向けて、曲がるストローを差し込み、息を思いっきり吹き込みます。空気が入っていく感じはありませんが、卵内部の気圧は高まっているはずです。そして圧を保ったままストローを素早く抜くと、穴から卵白がどろどろーっと流れ出てきます。ストローを抜く前に息を吹き込むのを止めてしまうと、生卵が勢いよくストローを逆流することになりますので、お気をつけください。

卵白が流れ出る様子をそばでみていた子供が「なんか鼻水みたいだねー」と言うので、食欲が失せるからやめろと伝えました。しばらくすると、またなにか思いついたらしく、「あ。そうだ。よだれみたいって言うのはどう?」って言い出した。どう?じゃねえよ。

 

大まかには卵白→卵黄の順に出てきます。なのでうまく取り分ければ、メレンゲとかも作れるんじゃないかな。

 

中身をきれいに取り出せたら、穴をもう少し拡張して内部を水洗いします。水を切って乾かしたら、卵の標本の完成!やったねー。

 

できたよーって子供に見せたら、卵に絵を描くんだと言っていました。

そうか。絵を描くのか。。もっと博物趣味のあるやつだと思っていたけど。ダチョウの絵を描くんだってさ。まあ子供らしくてかわいいね。

 

 

好奇心の部屋デロール (たくさんのふしぎ傑作集)

好奇心の部屋 デロール (たくさんのふしぎ傑作集)

パリにあるデロールというお店を紹介した本。デロールには博物館と見間違えるほどの、剥製や標本が大量に陳列、販売されています。地元の子供達が剥製をなでている写真が載っていて、動物園や博物館とは違う、こんなふうな動物との親しみ方もあるんだなーと感じました。店の雰囲気もとてもすてきです。

なぜ唐突にデロールの話を持ち出したかというと、この本、ノンブルのデザインがダチョウの卵なんです。

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「好奇心の部屋」っていいですね。うちにも作ろう。

 

うみねこ博物堂もいつか行ってみたい。

うみねこ博物堂

 

 

第2理科室を思い出すな。

 

 

貝の館(貝類専門博物館)

蘭越町にある貝類専門博物館『貝の館』に行きました。

北海道蘭越町貝の館 Shellfish Museum of Rankoshi

 

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この博物館は二枚貝をモチーフにしているらしい。まるで『すてきにへんな家』に登場しそうなデザインです。

 

すてきにへんな家 (たくさんのふしぎ傑作集)

すてきにへんな家 (たくさんのふしぎ傑作集)


実在する家も想像上の家もごちゃ混ぜにして、ただただ「へんな家」を紹介する本。

作者のタイガー立石さんはエッシャーに多大な影響を受けており、いたるところにエッシャーが好んだペンローズの三角形を描き込んでいる。

おもしろくて不思議な絵を描く、『たくさんのふしぎ』を代表する作家のひとりでしょう。

 

 

 

いきなりですが、これエッシャーっぽくないですか?

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巻貝が圧倒的な数で攻めて来る『貝の模様の多型』。

貝の模様を決定するメカニズムはいまだに解明されていないのだとか。それを示すためにこのありさま。

そういえば、9月に『エッシャーの世界』が芸術の森に来るらしい。もう今から楽しみです。

 

 

 入り口で来場者を出迎えるオオジャコガイ。

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殻だけで194kgですって……。でかい。ぱっと見は軽石みたいにカスカスな感じなんだけど。触った感じは完全に石でした。挟まれたら泣くなこれ。

 

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ドブガイ(研磨済み)の美しさよ。 

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悪口みたいな名前を付けてすまんかった…!と日本を代表して謝罪したくなるレベル。

 

 

そして『砂漠に棲むかたつむり(の殻)』をムダに動画撮影、という凡ミスを犯す。

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 採取場所なんかも丁寧に記録されています。まさか砂漠の岩の上にカタツムリがいるとは。

 

 

『流氷の天使』ことクリオネさんの図解。

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 手加減抜きの禍々しい描写!ラミネート加工済みなので気軽に手に取って眺められます。

生体も展示されていました。

 

 

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殻長5mの巨大チョッカクガイの模型。三笠の巨大アンモナイトの模型と同じ匂いを感じる。

 

 

おお!これは!!

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かつて、教会一軒に相当する価値があるとされたシンセイダカラガイ(神聖宝貝)。いまだに10万円近い価格で取引きされてるらしい。貝殻に10万円出せるってどんだけ……。

 

 

他にも、鉄の鱗を持つスケーリーフットの標本とか、中国の縦巻きカタツムリとか珍しいものが盛りだくさん。

 

 

ところで、入り口付近に3Dシアターがありまして。観てみたいなー、と聞こえよがしに話していたら、時間前にもかかわらず上映してくれました。ありがとうございます!やったねー!

 ……でもまあ1991年創設の博物館なので、最近の3Dと比べてはいけない。一応、迫り来る映像に手を伸ばしてみせるのは、観客に課せられたマナーなのかも知れません。

「貝の妖精」を名乗る3人の女の子(実写)が貝の世界をアニメ声で紹介してくれます。心してご覧ください。

 

 

書籍コーナーも貝関連のおもしろそうな本がたくさんあった。ビーチコーミングで貝殻を探そう!みたいな冊子があったんだけど、「砂浜で見つかる漂着物」として、何のためらいもなく海獣の死骸を掲載するストイックな目線にシビれる。

 

貝の標本は、中の肉を取り出すために、一度ドロドロに腐らせてから水洗いする、というのをネットで見かけました。おかげで貝殻にもしばらく強烈な腐臭がつきまとうらしい。大変そう……。アリとか、小型の昆虫がさささっと処理してくれたらいいのにね。

あ、ここの博物館は腐臭とは無縁なのでご安心ください。

 

 

さて、おみやげを探してショップを眺めていると、なんとオウムガイの殻が!!

博物館に置いてあるものは、出所とか処理の仕方にも安心感がある。ちょっと大きいけど……買っちゃおう!

 

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わーい。棚に置いた様子。

 

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 電球に被せた様子。成長線と滑らかな輪郭が強調されますね。幻想的。

 

 

 蜃気楼を吐き出すという、巨大な蛤の言い伝えがあります。

『貝の館』に飲み込まれて、ひとしきり幻でも見せられたのかも知れない、と思わせるほど不思議な造形の数々が堪能できる博物館でした。

 

また近々行きたい。解説も充実してておすすめです。

 

 

 

Bosch IXO バッテリードライバー

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Boschボッシュ)の電動ドライバー『IXO』。
 
 
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 「ドライバー」と紹介しながら、いきなりドリル刃を装備していますが、ラミーを改造したときの写真です。
 
 
この広告の雰囲気がとても好きです。アパートのチャイムひとつ取っても、たまらなくないですか?このデザイン。こんなの付いてたら、帰宅するたびにムダに鳴らしちゃいそう
ベランダに人工芝敷いてみたり、トマト缶すすったりってのもいい。
 
もろにビートルズ風味な楽曲も、シンプルなアレンジながら印象的です。
 
ピアノが紡ぐこじんまりとしたメロディから始まって、ウクレレ、タンバリン、ハンドクラップの軽快なリズムが曲を進めていく。特にウクレレの、小さな球をいくつもころころと転がすような音色は、この曲を明るく彩ります。
 
間奏明けから入って来るギターとベースは、控えめながらもマージービートには欠かせません。そして最後のサビで一気に煽ってくるオルガン。グッと来る。
 
繰り返し聴いていると、環境音(モーターの音とかグラスの音とか)も曲にしっかりとフィットしているのがわかります。
 
日本版はなぜか尺が短い上に、ミックスとアレンジもやや異なります。重心の下がった低域よりの仕上がり。そのぶんギターが目立つ。ラスサビのメロディも違う。なぜこんなバリエーション違いがあるんだろう。謎だ。
 
 
オリジナル版の方が好きだな。
 
 
さえない男とちょっと世話焼きな女の恋、というところが『エターナル・サンシャイン』とか『恋愛睡眠のすすめ』っぽい感じ(どっちもミシェル・ゴンドリー監督ですね)。
 
周りの人に見せたら、「めっちゃ少女漫画っぽい!」って感想もあれば、「これ書いたの絶対男だろ」っていう感想もあっておもしろい。
 
男からすると「なかなか踏み出せないけど仲良くなりたい、けど踏み出せない…」みたいにくすぶっているところを、ひょいと跳び越えて来てくれるのがいいんでしょうね、きっと。
 
女から見れば、男の好意は充分感じられると思うので、あとはもうそこに乗っかるだけなんじゃないでしょうか。
いや、でも、そこがけっこう頑張り所なのか……。
 
男女問わず、わりと奥手な人達が憧れるシチュエーションなのかも。
 
いつか営業部の人が、「誰でもみんな人見知りですよ。要はそこを頑張れるかどうかです!」と言っていて、「そこで頑張れる人を、人見知りとは呼ばないのでは……」と思ったことがある。
 
 
 
広告に登場するのは1世代前の『IXO4-plus』(もしかしたら『IXO4』かも)。
現行機種の『IXO5』はグリップの下に赤いタグが付いているので、見た目で簡単に判別できます。
性能的にはもちろん現行の方が優れているんだろうけど、できれば劇中で使用されているのと同じものを手に入れたい。
 
ということで、最寄りの大型ホームセンターに駆け込むと、ちょうど『4-plus』が在庫処分的に安売りされていました。やったぜ!
(↑1年ぐらい前の話です。今は現行の『5』が並んでいます)
 
家に帰って、少し充電して、空転させてみる。
モーターが鳴る。
 
憧れのミュージシャンが使っているのと同じ楽器を弾いたときのような感動がある。全くおんなじ音が出るよ!
 
 
ドイツの製品には魅力的なものが多い。
ボッシュステッドラー、ラミーなどなど。虚飾がなくていかにも工業製品らしい、こざっぱりとした佇まいがいいんだろうな。
 
 
IXOは1台あると相当便利です。インパクトドライバーほどのパワーはないものの、軽い工作程度ならドリルとしても使えるし(別売りの刃が必要ですが)。組み立て家具を作ったりバラしたりなんてお手のもの。このサイズとしては驚くほど力強い。ネジを締め切ったときの反動なんて、小型の獣を抱いたときのような感触すらある。
 
加えてあのアタッチメントの数々。ほんとに使うのかよ!って突っ込みたくなるようなアイテムもありますが(ペッパーミル、お前のことだ)、楽しそうですよね。
 
自然放電がかなり少ないので、使いたいときに電池切れ、ってこともないし。
小振りだから楽器のメンテナンス用としても使いやすいし。
 
 
おすすめポイントしかないです。
愛用してます。
 
 
 

メメントモリ・ジャーニー

亜紀書房ウェブマガジン『あき地』で連載していたメレ山メレ子さんの『メメントモリ・ジャーニー』が、遂に最終回を迎えた。
メメントモリ・ジャーニー - 新しい故郷 | ウェブマガジン「あき地」

こんなに楽しみな連載は、中学生の頃読んでた週刊少年ジャンプ以来だったので、書籍化が待ち遠しくてたまらない。書き下ろしもあるんだって。

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ウェブマガジンのいつでも読める便利さも捨てがたいが、やはり手元に置きたい。装丁とか、ブックデザイン的な部分でも楽しみです。『メメントモリ・ジャーニー』は、前作『ときめき昆虫学』の編集者が携わっているそうなので、期待せざるを得ない。

『ときめき昆虫学』の装丁もかなり好きだった。
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タイトルロゴのデザインがいいし、中央に据えられたカイコもかわいいし、表紙に散りばめられた文も妙に興味を引くものばかり(「単位おかしくないですか?」の本文中での衝撃といったらない)。巻末付録までついて、一切の出し惜しみなし。
『ときめき昆虫学』の感想なんかはこのブログの最初の記事に載せておりますので、よろしければご一読ください。

紙とか写真の質感とか、紙の本でなければ出せない魅力はたくさんある。
ふたつ歳上の兄は、買ってきた本を開く前に必ず一度、ペラリと表紙のカバーをめくっていた。なにしてんの?と訊くと、「カバーの下にオマケのイラストやメッセージなんかが書いてあったりするんだ」と教えてくれた。
『ときめき昆虫学』のカバーの内側にも、すてきなイラストが潜んでいる。

と書いてて思い出したけど、新刊に付いてる帯紙、あの帯に載ってる推薦文などのいわゆる「帯文」を収集している『帯文データベース』というサイトがあるのを最近知った。こういう活動は貴重だ。

帯も電子書籍では、ない……のかな??知らないや。技術的に載せられないワケはないだろう。ただ、ページをめくるテンポを考えると、

表紙(カバー付き帯付き)
↓めくる
表紙(カバー付き帯なし)
↓めくる
表紙(カバーなし)

なんて脱衣麻雀みたいにちまちまやってられっか!という人もいるだろうな。だから帯を省略してる電子書籍も多いんだろうな。たぶん。知らないけど。


脱線しました。


メメントモリ・ジャーニー』です。本題は。

「旅と死について考える連載」と銘打たれた旅行記なのだが、ひとことで「旅行記」とくくるのがためらわれるぐらい、内容が濃い。スプーンが立つぐらい濃い。随筆的な部分も多いし、書店ではどの棚に並ぶんだろう。
メレ山さんのブログ『メレンゲが腐るほど恋したい』で見られたハイテンションな文体は鳴りを潜め、落ち着いた語り口でより内面的な部分に触れられている。旅行の内容自体は『メレンゲ〜』や『ときめき〜』で既に語られていることも多いのだが、目線が違うというか、編集方針が違うというか。ひとつの旅行を記録した同じフィルムの中からどのコマを繋ぎ合わせるか、が違うだけで、こんなにも印象が変わるのかと思う。
とはいえ、ブログでおなじみの軽妙な言い回しや、会話のおもしろさをコンパクトに抜き出すセンスは引き継がれているし、「旅と死」をテーマに据えているわりに全体が暗くなり過ぎないのは、メレ山さんが注意深くコントロールしているからでもあるのだろう。


そんなことを考えていたら、学生時代に受けた『水曜どうでしょう』の藤村ディレクター(通称「藤村D」)の講義を思い出した。
藤村Dの話で特に印象に残っているのは、「『どうでしょう』の大泉洋のキャラクターは編集で意図的に演出している」というものだった。例えば、大泉洋さんの発する下ネタは全部カットしている。撮影現場で下ネタNGの縛りがあるわけではないのだが、「深夜番組だからといって下ネタに頼る番組作りにはしたくない」、というこだわりの編集方針だったらしい。だから大泉さんは番組には使われないものの、けっこう下ネタを連発していたらしい。
『ヨルタモリ』では終始下ネタだったもんな、大泉さんの回……。おもしろかったけど。

メレ山さんは、そんな演出がとてもうまい人だと思う。『メレンゲ〜』とツイッターと『メメントモリ・ジャーニー』では、文の調子が全然違うが、気分で変えているわけではなく、それぞれ見せる貌が違うだけなのだろう。


それだけに、明るくハイテンションな印象の『メレンゲ〜』には珍しく、「死」という言葉が出てくる記事『月桃とすばらしい日々』を読んだとき、妙に動揺した。

「これはたしかにすばらしい日々だ、(中略)こういうものを集めることで死ぬのを一日先に遅らせることはできる。」


地面に落ちた黒い影を見て、日の光の強さを実感するように、死を意識することは、同時に生きることも強く意識させる。月桃とすばらしい日々』は『メメントモリ・ジャーニー』のエピソードゼロだ。短いけど何度も読み返したくなる。

数年前に収入保障型の保険に加入してみたら、生きる意味がひとつ失せてしまった気がした。この博打は、自分が死ぬ方に賭けたのだ。勝っても負けても得を残したい、典型的な博打下手の賭け方だ。なんということだろう。


死が生を意識させるように、旅は故郷や家を想わせる。

メメントモリ・ジャーニー』には、マンションを購入する計画が登場する。
巣作りをするように、少しずつ手を入れたり、家具を探したり。マンションを好きに改装して住むのはとても楽しそうだ。
浮かされたように、とりあえず勢いで芝生みたいな緑色の絨毯を買った。部屋に敷いてみると俄然盛り上がってくる。そして今は、絨毯に似合う無垢のローテーブルを作り始めている。住処を整えることは、即ち生きて暮らすことなのかも知れない。そのへんのカフェみたいな家にしたいとは思わない。


連載の最後、ひとりで暮らす家を思い描きながら、そこで育もうとしているのは、他者との関わりだ。住処を整えるのと同じく、周りとの関わりを育むこともまた、生きて暮らすことなのだ。


って感想を書いていて、改めて、この連載すげえ……!ってなってる。「旅と死」という一風変わったテーマが、こうもしっかりまとまるとは。
今後「メメント・モリ(死を想え)」という警句は、『メメントモリ・ジャーニー』の結びの明るさと共に思い出すんだろう。
無垢材のテーブルに置かれた花瓶を照らす、5月の朝日のようです。