ジャガーノート

本や音楽の話を書いていこうと思います。

闘獣棋

中国の伝統的なボードゲーム「闘獣棋」を作った。

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闘獣棋の話をするとよく獣王記と間違われるが、全くの別物だ。

子ども達とポケモンカードゲームで遊んでみたら大層面白く、自分でもゲームを作ってみたい、と思ったのが制作のきっかけだった。構想当初は、高低差のある盤と駒・サイコロなどを使ったアナログ版のタクティクスオウガみたいな壮大なものだったのだが、ボードゲームをあれこれ調べる中で見つけた闘獣棋が、ルールもシンプルで気軽に遊べそうな印象だったので、こちらを先に作ることにした。アナログ版タクティクスはまた今度だ。人は一生のうちにいったいどれだけの工作を諦めるのだろう。

 

闘獣棋のルールの全ては、ウィキペディアで知った。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%97%98%E7%8D%A3%E6%A3%8B

 

詳細はウィキペディアに譲るとして、大まかなルールは以下の通り。

・相手の駒を全て取るか、獣穴に辿り付けば勝ち。

・駒の動きは全て縦横1マスずつ。

・強い駒から順に、象・獅・虎・豹・狼・狗・猫・鼠。同等以下の駒のみ取れる。ただし鼠は象を取れる。

・「陷阱」(落し穴)のマスにある駒はどの駒でも取れる。

・川には鼠のみ入ることができる。また獅・虎は川を跳び越えることができる。

 

駒の動きが1種類のみなので覚えやすい。獣の種類は、猫が蛇だったりもするらしい。

ウィキペディアの画像だと川が池みたいだと思ったので、盤の左右まで突き通した川に3つの橋が架かるデザインにした。

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中央の橋はアーチをかけてこぎれいに、左右の橋は紅茶で染めてやや粗末な感じに。理由は特にない。左右対称にしたかったからか。

 

勝手にイメージしたのは、なんらかの呪術師が獣を使役し、川を挟んで戦うというものだ。川の両岸を森と草原にしようかとも考えたが、どうぶつしょうぎみたいになりそうなのでやめた。

落し穴の意匠は金文の「封」の文字にした。草を地面に植える形の象形文字だ。草木を植えて土地の境界を作ることから、閉じ込める、土盛りする意を表す字となる。獣穴の境界であり、封印の罠でもあり。このゲームにうってつけだ。

書体は白川フォントから。

http://www.dl.is.ritsumei.ac.jp/Shirakawa/search/?

フリーです。なんてありがたい仕事だろう。

封の字の色は少し黒みのある真朱に。中国の朱丹が由来だ。ルーツへのリスペクトは大切にしたい。

 

そしてこの工作最大のポイントは、盤と駒にネオジム磁石を仕込んだことだ。

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鼠を除く全ての駒と封のマスはN極を上に、川にはS極を上にした磁石が埋まっている。封印の結界を踏んだ獣は重力系の呪術により、身体の自由を奪われる。よって下位の獣にも攻撃を受けてしまうのだ!っていうこの設定よくないですか。

何より鼠以外の駒で川に踏み込もうとしたときの反発がいい。ルール違反を防ぐと同時に「川には入りたくない」というレスポンスが駒から返ってくる。駒からのレスという感覚は新しい。完全に支配したわけではない、獣の意志を感じる。階段が苦手だった白い犬を思い出す。「そっちには!行きたくない!」というあの感じ。無理に川に駒を置くとひっくり返ってしまう。鼠だけがすんなり入れる仕様。

封印の結界は鼠にも無効ではないのだが、ゲーム上、奴は八部衆の中では最弱なので効いたところで無意味。設定の上では、鼠は体重が軽いので重力系の術は効果が薄いッ……!ということになっている。

 

 

材料はコルクボード、ヒバ、バルサネオジム磁石、紙。構想2年、制作述べ5日ほど。

 

画像フォルダにある最古の記録。2018年6月23日。

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完成。2020年5月3日。

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凝らなければ10分ぐらいで作れるだろうし、既製品も売っているが。楽しかった。満足だ。

 

 

宮澤 余市

https://twitter.com/classic108fuzz