ロシアのバンド、レニングラードのこと
ロシアンロックコーナーにデカデカとポップが掲げられているのを想像しながら、地下街を足早に歩きタワーレコードを目指す。YouTubeとiTunesで曲名とアルバムタイトルの下調べを済ませ、準備は万全であった。20年の歴史を誇るバンドなのでさすがに全て揃っているとは思ってなかったけど、まさか1枚もないとはな。
そもそもロシアンロックの棚なんてなかったしHMVにもAmazonにも置いてないしかつて夏のロックフェスで日本中の音楽ファンに衝撃を与えたことがあるのではないかというのも個人の妄想に過ぎなかったし英語版ウィキペディアは長らく更新されていないしロシア語読めないし日本語で検索しても彼らの情報はあまり出てこない。
そもそもロシアの音楽事情は、旧ソ連の国営レーベルや文化的ゆる鎖国時代など分からないことだらけだ。隣りの国なのにね。
その分からなさゆえ謎が謎を呼び、掘っても掘っても全容が見えた気がしないが、ここらで一度メモがてら纏めてみます。
Ленинград(英:Leningrad)(以下レニングラード)
ロシア第二の都市の旧名を冠したこのバンドはその名の通りサンクトペテルブルク出身で1997年結成、2008年解散、のち2010年に早々と再集結して今に至る。
管楽器を含む14人からなる大編成と裏打ちを基調としたリズム、ロシア民謡的なアッチェレランド(テンポアップ)の多用が音楽的な特徴だが、それに留まらずヒップホップを取り入れたりもするのでジャンル分けが難しい。90年代に我々はミクスチャーという便利な言葉を得たが、あれはあれで「ヘヴィリフとラップ」という特定のイメージが染み付いてしまったので、レニングラードの音楽を説明するのには不向きだろう。もともとロシア・東欧の民謡にはラップの要素も持つものもあり、彼らの用いるラップスタイルもアメリカからの輸入だけではないかも知れない。
例えば『Кольщик』。
全編一人称視点のアクション映画『ハード・コア』のイリヤ・ナイシュラー監督が手掛けたMV。精細な逆再生で見せるサーカスの惨劇が不思議と曲のカタルシスを高める。中盤で入る短いラップは明らかにアメリカのスタイルではない。聞き慣れない言葉の響きが心地いい。
さて、前述の通りレニングラードはメンバーが多い上に入れ替わりもそれなりにあり、関わった人数はゆうに30人は超えるだろうと思われるのだが(さすがに歴代メンバーの数まで数えてない)、特に注目したい人物を紹介してみる。
まずはメインボーカル、セルゲイ・シュヌルフ。通称シュナー。
酔いどれ詩人トム・ウェイツを彷彿とさせる強烈なしゃがれ声が特徴。セルゲイ自身、レニングラードの音楽をウォッカになぞらえているのが面白い。あの声は酒灼けのせいなのかも知れない。ボーカルだけでなくラップもこなし、バックに回ったときの煽り方も半端ではない。ライブ中、彼の「давай!(ダヴァイ!)」の連呼を何度聞いたことか。
「давай」の意味は検索すればいろいろ出て来る。促し、けしかけ、扇動なんかのニュアンスがあるが、どうやら一言でぴたりと当てはまる日本語はない。「ほら!」とか「さあ!」じゃないんだよ。「давай」は「давай」でしかない。考えるな感じるんだ的な。
最近はタンクトップにハーフパンツが基本スタイル。部屋着かよって感じで正直ぱっと見は理解しにくいファッションなんだけど、メンバー全員ファッションセンスが難しめなのですぐに見慣れる。いつか着ていた「ЭТО НЕ Я(それは私ではない)」ロゴのタンクトップなぞ何か強いメッセージを秘めているのでは、といろいろ探ってみたりもしたが、時折ネコ柄のタンクトップなんかも登場するので深く考えるのはやめた。
使用ギターは一貫してテレキャスタータイプ。現在はロシア国旗モチーフのものがメイン。テレキャスター使いには珍しくフロントピックアップしか使わないため、セレクタースイッチはフロント側に固定している。アンプはツインリバーブ。多彩なピッキングスタイルを操り、フラットピックだけでなく指弾きもよく使う。大編成のギターボーカルながら、ギターをしっかりと大きく鳴らすのも好感度が高い。完全にリズムギターの人。
セルゲイボーカルのおすすめ曲は『WWW』。ライブでは客席を一瞬で沸騰させる力がある。対してCDでは酔っ払いのデモテープかと思うレベルのチープさ。けれど2回も聴けば慣れる。酔っ払いの歌なのだからこれはこれで正しいのだ。
MVだとゲリラライブ風のこれ。『Фиаско』。
サビで忙しなく駆け回るモノシンセの8bit的なサウンドもポイント。シャレの効いた締めが最高なので、ぜひ終わりまでご覧いただきたい。
2人目は黒髪の女性ボーカル、フロリーダ。スモーキーかつなめらかな歌声の持ち主。
『ЦЫПЛЁНОК』(たぶんこれが曲名だと思う)
このライブは完璧にコントロールされたシャウトとミュージカルのように芝居がかったダンスが見どころ。ロシアのちびっ子達も大はしゃぎで踊ってる。ときには放送禁止用語抜きで、子供も楽しめる音楽が出来るのもレニングラードのいいところ。
フロリーダはボーカリストとしてはかなり器用で、酔っ払いスタイルのラップを披露してみせた『Ч. П. Х.』は出色の出来。
このMVは目の座った様子や垂れた前髪を吹き上げる仕草、ラストに膝がカクッと落ちる感じがとてもリアル。いやリアルっていうか多分ほんとに酒飲んで撮ってる。歌詞もほとんど酒のことばかり。レニングラードの2017年ベストMVらしい。
公式ページでは「レニングラードのスペードのクイーンにしてファタ・モルガナである。」と紹介されていてるフロリーダ。アーサー王伝説にも登場するファタ・モルガナを、女神・妖精・魔女のいずれと解釈するかでニュアンスが変わるけど、そのモルガナの捉えどころのないさまが彼女の変幻自在なイメージに合う。
他にも常にフードを被ったワウペダルマスターや、歌って踊れる巨漢の大太鼓、タトゥーだらけのトランペットなど、怪しくも魅力的な人物が大勢いるのだが、そろそろ2700文字を超えてしまいそうなのでひとまずここまで。いつか続きを書く。
宮澤 余市
小樽市総合博物館 運河館(第2展示室他)
続きです。
鯱鉾。倉庫に備えるのは珍しいのだとか。間近で見るとかなり大きいです。
ちなみに前回の記事で紹介した出抜小路は、鯱鉾の代わりに鮭が付いています。シャケホコ。お越しの際はぜひご確認を。
明治頃の様子、だったかな…?思い出しながら記事を書くには時が経ち過ぎた。
こういう建物の中に屋外の風景が収められているのっていいですよね。部屋の中に石畳や街灯があると楽しい。自室にも街灯が欲しいと本気で思う。
そして第2展示室へ。
この書体は古めかしさではなく、チープなおどろおどろしさを醸してしまうのだ、というのは声高に叫んでいきたい。
中庭。
封印された石炭。重量約3トン。大き過ぎて神が宿るレベル。しめ縄が似合いそう。
キタキツネの親子。子ギツネの前のめりな姿勢がかわいい。第2展示室は小樽の生きものがたくさん展示されています。
キツネの後ろにもチラッと見えますが、キノコの模型の出来がすごい。ホンモノみたい。こんな模型が本棚にさりげなくあったとしたら素敵だ。造花業界はそろそろキノコに本腰を入れるべき。
UFOの大群みたい。
ところで前回書いた小樽市総合博物館の紀要は、無事に入手出来ました。
もしかしたらまだ博物館に在庫があるかも知れません。なくても小樽の図書館で閲覧できるそうです。ありがたい。
誰かが纏めておいてくれたお陰で、知りたいときに調べることが出来る。もし博物館や図書館がなければ、いずれ知がかすれてしまう。
知を将来に繋ぐために、金を割く価値がある。採算がー、とかじゃなくない?
『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』
歴史的記録が途絶えたのちに再び年代を測定する手法とか、バイオディーゼルより収穫物全部燃やす方が高効率とか。おもしろいです。
小樽市総合博物館 運河館 (夢の里オタモイ編)
小樽市総合博物館運河館。
手宮の本館から徒歩20分ぐらいの距離にある。石造りの倉庫をそのまま利用しており、周囲に馴染み過ぎて一見すると博物館に見えない。駐車場左手最寄りの石造りは博物館ではなかったのだ。迷った。駐車場を出て右手方向、鯱鉾の看板が目印。
館内は2つに分かれており、第1展示室では主に小樽の歴史が紹介されている。海運で栄えた街に相応しく、1/20スケールの大きな北前船の模型が。細かく作り込まれていて見応えがある。当時の写真や帆の一部の実物も展示されており、まあとにかくでかい船であったのだなと。
引札と呼ばれる当時のチラシなんかも。
ニシンコーナー。壁面に網をあしらうのはとても素敵だと思いました。
ニシンはおいしい。余市でニシンのピザを出すお店が何軒かあって、どれもうまい。アンチョビに似てるんだけど、より塩気が少ない分、ニシンの身の旨さが味わえる。
余談ですがニシンの燻製とウイスキーの相性も最高だった。煙の酒には煙の肴がよく合う。魚が苦手な人には豆腐の燻製、燻し奴をおすすめしたい。
上の南保留太郎商店は余市のお店だが、ここの燻製は小樽出抜小路のニッカバーでも味わえる。ニッカバーにはコーヒーやノンアルコールカクテルもあるので、車でも気軽に立ち寄れるのがありがたい。
だが正直ウイスキーを飲みたい。
さて、話を博物館に戻す。
運河館を訪れた目的はこのオタモイ遊園地。
2006年、オタモイ遊歩道が崖崩れの影響で閉鎖された。オタモイ遊園地のことはそれまで知らなかった。夕方のローカルニュースで流れた映像を見て、なんだかとんでもなく魅力的なところだと思った。崖に楼閣がそびえているなんておとぎ話の世界みたいだ。
行ってみたいけど行けない。実は行けないことはないらしいが、件の龍宮閣は基礎しか残っていない。グーグルマップでも見れるが、まあそっけないものだ。
ただ、遊歩道を囲う朱色の柵はいい。いつか歩いてみたい。
運河館の展示はこんな様子。
在りし日の写真にパンフレットや絵葉書、龍宮閣で使われた半纏や皿など。などっていうかそれが全てだ。やはり残された資料は少ない。けど実物の半纏はとてもかっこいい。
新選組の羽織みたいにお土産にしたらきっと一部客層に爆売れするよ。Tシャツでもいいと思います。
パンフも。
これのレプリカをお土産に(略)
絵葉書。
小樽市総合博物館の2万点超の収蔵資料をデータ化した、デジタルアーカイブスという尊いサービスによって好きな写真をプリントしてもらえる。ありがとうございます。めっちゃうれしい。
プリントもきれい。パソコンで資料を閲覧してるときはもっと低解像度だったのでびっくり。絵葉書らしくビシッと決まった構図もいいが、人が賑わっている様子の写真がいかにも楽しそうでよかった。
絵葉書を受け取りながら、
「オタモイ遊園地を観に来たんです」
「ああ、あそこは昔けっこう流行ったんですけどね」
なんて言葉を交わしていると、ついひと昔ぐらい前の話をしているような気がしてくる。
後日しつこくオタモイの資料を探していて、HO2017年10月号小樽・ニセコ・岩内特集にオタモイ遊園地の記事を見つけた。
バックナンバーのため札幌の書店では見当たらなかったが、小樽の喜久屋書店がビニール掛けて山積みしてあったのはさすがという他ない。
記事を読み、博物館で絵葉書をプリントしてくれた方がオタモイ遊園地の研究をしている指導員であることを知る。そして更にオタモイ遊園地に関する論文を小樽市総合博物館紀要第28号に寄稿されていることを今知ったのだが、限定500部だというので辛い気持ちになっているところだ。
2015年3月20日発行、限定500部…。
まだ残っているのか……?
(続く)
宮澤 余市
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夏の水中遊覧船(青碧の積丹編)
積丹の海。
白いシャツは海の色が移るので避けた方がよい。
というホラ話をいま思いついた。
ゼリーみたい。
これなんか完全にゼリー。スプーンでぶるっとすくえそう。
ポルコ・ロッソかジャック・スパロウが出てきそうな島。上陸したい。ぷらぷらと散歩して、1時間ぐらい経ったら拾いに来てほしい。
遊覧船では船底に降りて海中を眺める時間もあります。
この大量に落ちている黒いものは全てウニ。クラゲや魚も泳いでいるが、とにかくウニの印象が強過ぎる。ウニ好きなら、予めどこかでウニを食べるプランを練っておいた方がいいかも。
クルージングの終盤、海鳥を誘うパンの耳がボウルに入って回ってくる。「このパンをウミネコに」と説明する間もなくパンの耳にパクつく子供たち。
「おいしい!」
それはよかった。だが、そのパンはウミネコさんにあげてくれないか。
お集まりいただいた海鳥のみなさん。大雑把に金眼で大柄なのがウミネコ、黒眼で小柄なのがカモメだと思っていたけど、けっこういろんな種類の鳥が混ざっていそう。海鳥の見分けは難しい。
「ここで二手に分かれよう!」
速度を上げる船を悠々と追う姿がかっこいい。
手を伸ばせば触れそうなほど近くを飛ぶので、噛まれないようにご注意ください。船と並走したりパンを狙って急降下したりと、様々な飛行術を見せてくれます。空中での急減速が特に好き。
連写やスロー撮影をしておくと、見返したときにいろいろと発見があるのでおすすめしたい。
そして唐突に本の紹介を。
これまで読まれていたオリジナル版に最終章を付け足した完成版。新たに書き足したわけではなく、もともと存在していた最終章を省いたものがオリジナル版だったようです。
最終章は省くべきではなかった、というのが率直な感想。これで物語にけりが着く。完成版未読の方はぜひ。文庫版も出ています。
話を遊覧船に戻します。
乗船時間は約40分。
遊覧船は定員に達し次第出航するので、駐車場に着いたらまずチケットを購入し、出航時間を確認しましょう。5歳未満は無料ですが、定員に含まれるため無料のチケットを渡されます。これがないと乗船時にわたつくので忘れず窓口で用意してもらいましょう。
待ち時間は混み具合によってまちまちですが、これまでの経験では最短で10分、最長で1時間半ぐらいでした。遊覧船の乗り場自体にはジュースの自販機ぐらいしかありませんが、待ち時間が長いときでも、
・漁港をぷら着く
・黄金岬の展望台へ登る
・近くのセイコーマートへ行く
・ウニ丼を食べる
など、いかようにも過ごせます。
船を降りてから、子供が「大人になったら忘れちゃうのかもしれないけどさ、楽しかったからいつかまた来たいな」などと泣かせることを言うので、次の週にまた連れて来た。たーのしー!飽きない。
さて、こんなに楽しい積丹の水中展望船ですが、料金等の詳細を調べるべく公式サイトを見に行くと、なんとエンジントラブルにより8月6日以降、運航中止とのこと。
なんてこった……。
再開を心待ちにしております。
宮澤余市
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ナイフと味噌汁の話
友達とナイフの話をしてたら、まあオピネルがいいだろうよという結論に。他にも選択肢はたくさんあるのだが、なにせお手頃なので1本持っておいてもいいんじゃないかと。
オピネルにも種類がいろいろあって、その友達は釣った魚を捌く用にスリムナイフが欲しいと言う。用途に合わせた選択は大事。
OPINEL 折りたたみナイフ No12 スリムナイフ オリーブウッド ステンレス鋼
名前の通り細身のブレードと曲がったハンドルが特徴の鋭さとクセを併せ持つルックスです。友達の獲物は川魚がメインらしいから小振りなサイズがいいかも。大は小を兼ねるとは言うものの、折りたたみナイフはブレード長とハンドルのサイズがほぼ比例するのでサイズ選びは慎重でありたい。
特にオピネルはまるでビッグライトを浴びせたかのように、ほんとに無頓着に等倍で大きくなっていく感じなのでサイズが上がるとハンドルの長さはもちろん太さもそれなりに。No.12を所有しているのですが握りが太くて持ちにくく、あまり出番がない。
よいちは No.12を そうび できないが いいかね?
って言われてもたぶん買ってたが。
ハンドル削ろうかな。最近はもっぱらイタドリの伐採に使ってる。
オピネルは獲物に合わせてというよりは、手の大きさに合わせてサイズを選んだ方がいいのかも知れません。
と言いつつもサイズ違いでコレクションしたくなるのがオピネルの罪なところ。とりあえずNo.8が定番ですよ。持ってないけど。
ところで急に話が変わるんですが、Nusretさんてすごくないですか?あの塩の振り方は誰に習うの?意味あるの?など興味は尽きない。
Turkish Chef Nusret #Saltbae Video Compilation - YouTube
ほら、この人。初見はギャグでやってるんだと思ってたんだけど、ナイフ捌きがとんでもない。ちょっとググったらトルコのステーキチェーンのオーナーだっていうから、なおさらこの人の使ってるナイフが気になり出した。
再びググること2分。
DICK。これか。ドイツ製。
Skinning, sticking and butcher knives
下記がディック・ジャパンのリンクです。
ブッチャーナイフ / ディック・ジャパン - DICK JAPAN
クロムモリブデン鋼。絶妙な反り具合ですね。ベルヌーイカーブ的な何かなのか。刀みたいだ。使ってみたいよー。
ちょうど我が家の普段使いの三徳包丁がね、最近ちょっと荷が重いのかなって。刃こぼれが多くて研ぎが追っつかないというか。刃が硬いんだよな。たぶんまな板が悪い。いっそメンテナンス性も考慮して、などと理由を付けつつ、遅めの母の日プレゼント的に妻に贈るカタチで新調するのもいいのかなと考えていたのですが。
だけど2日ぐらい前に友達と「やっぱりオピネルだよね!」という話をしたばかりなのに、と思うと突然ディックに鞍替えするのもどうかと。
オピネルでブッチャーナイフ出してないのかな。キッチンシリーズがもっと充実してたらいいのに。
と、オピネルのメーカーサイトを見に行くと、あれ?なんか種類が少ないような…。
あ、カーボンスチールがない。
まさかディスコンか。
いやいやいや、ありえねえだろ。カーボンスチールのオピネルはフランスの心と魂だぜ?
気をとり直して本国おフランスのサイトを見に行く。
なんだ、あるじゃん。カーボンめっちゃあるじゃん。よかったー。
ていうかopinel.jpなしたの?カーボンスチール売れてないの?それともステンレスフェアでもやってんの??
フランスはキッチンシリーズも超充実してる。うれしい。どこで買えるのかな。黒いハンドルがすてきです。いや、包丁は大抵黒ハンドルなのだが、オピネルなのに黒っていうギャップがいい。この闇堕ちしたような雰囲気が最高。
そして。
おわかりいただけるだろうか。左下に燦然と輝く「SANTOKU」の綴りが。
三つのトクを積んだゼンマスターのみが扱えるという最高位のナイフ、サントクの力は凄まじい。対象の防御属性を無効化する力を持ち、いとも容易く鳥獣の肉を削ぎ、魚介を捌き、ジャガイモの皮を剥くことが可能だ。三界を統べるサントクはあらゆる命を断ち、そしてまた命を繋ぐ輪廻の刃なのだ…!
(↑超てきとう)
opinel.jpさん、輸入してくれないかなあ。
さて、ここは読書感想文を書くブログだったっけな。
料理研究家土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』を読みました。具沢山味噌汁の写真が満載でおいしそうにも程がある。豚肉を少量加えるアイディアが気に入ってちょいちょい使っている。読み終えると、これにおろし生姜を止めるとうまい、などと言いたくなるし実際うまいからよくやる。
和食の話は日本礼讃に直結しがちだが、土井さんはひたすら味噌はすごい、味噌汁はうまい、味噌汁の掌の上で何をやっても自由だと綴る。
好きな文を少し抜粋させていただく。
生きることと料理することはセットです。
作る余裕も時間もないのに、できっこないのに、おかずまで作る必要はないということです。(中略)量が足りなければ、ご飯も味噌汁もお代わりすればいいのです。
しかし、味噌の調味料としてすごいところは、少しくらい多くても、あるいは少なくてもおいしくできるところです。味噌という生命体、大自然の大きさゆえです。あまりに辛いと思えばお湯をさして下さい。
〈体裁を整えた味噌汁〉
(中略)椀によそうとき汁を多めにして具をあまり見えなくするだけでも効果があります。
土井さんの文章、人柄が出てるというのか、ちょっとにわかに真似できるものではないけれど簡潔で品があっていいですよね。
そんな土井さんが使っている包丁はなんだろう?と探り出すといつまでも終わらないので、今回はこのへんでおしまいにします。
宮澤 余市
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春のビーチコーミング(瓶、缶、骨、外骨格など)
ビーチコーミング(Beach combing)
海岸などに打ち上げられた漂着物を収集の対象にしたり観察したりする行為。
(Wikipediaより)
雪が降った翌日に急に気温が上がったせいなのか、夜中は突風が吹き荒れていました。札樽自動車道は横風注意報が出ていて、油断すると車体が軽々と流されてしまう有様です。F-ZEROのステージ4、DEATH WINDさながら。
いっそスーパージェット(あの超加速するやつ)で風を突っ切ろうと思い、車のターボスイッチみたいなやつをオンにすると、運転の難易度がグッと上がってほんとに死ぬかと。ハードモードはゲームだけで充分ですよう…。
強風などで海が荒れると、浜の漂着物が増えるそうです。そのため日本海側のビーチコーミングは、海が荒れやすい冬がおすすめとされている。だがしかし、どれだけの本気度かによるとは思いますが、正直、冬の日本海に立てますか?仕事だとか仕事絡みの釣りだとか(やったことないけど)、のっぴきならない理由があれば別だが出来れば避けたい。だってあの東映のオープニングみたいな波が氷点下5°Cとか10°Cとかの中で襲い掛かってくるんですよ。ふつうにいやですよ。
ところが。
ある日ツイッターで、「ビーチコーミングでカニの化石を拾った」という方の呟きが流れて来た。
カニの化石。
このワードだけで物欲を突沸させるには充分。ツイートに添えられた、手のひらにカニの化石をころりと3個のせた画像がめっちゃいい。どっからどう見てもカニそのもの。クリーニングなしであんな状態のものが落ちてるなんて。しかも3つも。近所の海でも探せば見つかるんじゃないかという期待が高まります。なんせこの星の海はひと続きだからな。
ちょうど週末に風も落ち着いて気温も上がり、天気もすこぶる良かったので海に行って来ました。
引き潮だった。テトラポットまで歩いて行けるよ。よじ登って向こう側を眺めるチャンス。だが大人なのでそんな無茶はしない(近寄ると意外と高さがあったのであっさり諦めた)。
そう、この辺はテトラポットがたくさんあります。波だけでなく漂着物も遮られるので、ビーチコーミングはポットの合い間を狙って行きます。
敷居。鴨居かも。
丸太。もったいない精神と工作欲が刺激されるが我慢。
謎の漂着物。
ぱっと見は笛かと思ったけど、焼き物のようです。しかも円筒ではなくて、トンネル型というか、断面がU字型の物体でした。太さはアルトリコーダーぐらい。形もきれいに保たれているし、埴輪とか土偶とか言い出すほど古いものではないようですが。20世紀の海の道具でしょうか。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただきたいです。
カニの甲羅。あとで同定しよう。とりあえず写真だけ撮る。
ビールの樽。
2、3個転がってたけど、この銘柄見慣れないな。。
こんなのも。
あ。この人をなめ腐ったようなツラ構えは。
プルタブ取れる世代の缶じゃないか。道理で見慣れないわけだ。
…お前ら一体いつの時代からやって来たんだ。
アンティークな小瓶などのいかしたものは見当たりませんでしたが、こういう拾うまでもないけど、今となっては珍しいものがゴロゴロ落ちてる。この玉石混交具合がビーチコーミングのおもしろいところ。最初に見つけたときは物珍しさに興奮するものの、エンカウント率が上がると一気に興味が失せていく。上に挙げた漂着物も誰かにとってはお宝かも知れません。興味が失せた物を持って帰ってもゴミになるだけなので、写真だけ撮ってブツは置いて帰る、ショット&リリースもひとつの選択肢です。
おお。骨だ。
イルカの脊椎かな?まだ新しい。赤みが残っていたので、持ち帰るかどうかめっちゃ迷ったけど結局リリース。頭骨もあるかなと思って辺りを探してみたけど、流れ着いた骨はこれだけだったようです。
謎の漂着物その2。
なにこれ??全然わからん。
節があって、
真ん中に穴が空いてる。
植物かなあ?……それともなんかの脊椎??まさかな。
大きさは直径13〜15cmぐらい。
これもどなたかご存知であれば教えてください。
iPhoneが勝手に色補正してムダにいい感じに。これがインスタジェニックというやつか。
またカニだ。さっきのと同じ種類。
脚が3対しかないように見えたので、タラバガニの仲間なのかなと思ったけど、甲羅の形が違う。ネットで「タラバガニの子供です!」って紹介されてるのもあったけど、掲載されてる写真では思いっきり脚が4対見えてたし。。
子どもに借りた図鑑とネットを併用して調べたら、どうやらヨツハモガニらしい。ちぎった海藻を身に付けて擬態する習性があるそうです。それで先に見つけた甲羅にも海藻が付いてたのか。
思いがけずかっこよく撮れてうれしい。
小さいのにゴツゴツ、トゲトゲしてていいですよね。爪も太くて立派。なんかいろいろ調べたおかげでヨツハモガニ好きになっちゃったな。そのうち生きてるやつも探してみたい。
……って化石のことを完全に忘れてた。
厚田の海岸でカニの化石が見つかるという情報を入手したので、そっちで探した方がいいかも。
カニの同定の際、参考にした図鑑はこちらです。
最近の図鑑は写真がきれいでうらやましい。
おまけ。
海を望む家。
柵の上にハシゴが乗っかってるように見えるだろ?
事実、柵の上にハシゴが乗っかってるんだよ。
1段目にすら足を掛けられる気がしない。
シャクルトンの大漂流
冒険のあらゆるエッセンスがすべて詰まっている。
石川直樹(写真家)
「シャクルトンの大漂流」
全72ページの大作である。文字は小さめで、ふりがなも少ない。小さな子がひとりで読むのは難しいかも知れない。そもそも、あまりこども向けに書かれているようには見えない。
ストーリーは意外にも資金集めから始まる。いきなりお金の話。次に隊員の募集、面接の様子と続くドライな要素に、浮き足立った気分は肩透かしを喰らう。
だが続いて見開きで隊員の一覧がある。このページには何度も立ち帰ることになると思う。何せ登場人物がべらぼうに多い。人名が出るたびに「この人、なにやってる人だっけ?」ってなる。28人の隊員一覧から目当ての人物を見つけ出すのは、ちょっとしたウォーリーを探せ状態だ。そして見返すたびに新たな発見があるのが楽しい。「そういえばこの人、こんなアイテム持ってたな」とか、「このパーティーは○○スキルが高いメンバーを抜擢したのか!」とか。
デフォルメの効いた絵でありながら、道具や持ち物、船の構造まで、こまごまと描き込まれているのがおもしろい。南極でのなごやかな日常も魅力的で、ちょっと『十五少年漂流記』を思わせる。
圧巻なのは、見開きで描かれる大自然の臨場感。視点を自在に操るような見事な構図は必見だ。ぶ厚い氷が埋め尽くす海や黒い嵐に、氷と船の軋む不吉な音を想像してしまう。
本を閉じることで物語の過酷な状況から逃れ、平和な現実に帰る安堵の感覚が好きだ。かつて『刑務所のリタ・ヘイワース』や『イワン・デニーソヴィチの一日』の合間に燻らせた煙草を思い出しながら、そっと絵本から目を逸らし、深呼吸をする。
膝に乗せたこどもにせがまれ、ページをめくる。続きが気になって仕方がないのだ。結局、一気に読み終えてしまった。
この絵本を読んで感じるのは、作者ウィリアム・グリルの作品に対する生真面目さだ。絵も文章もとても丁寧で、丹念な取材が想像される。造船の大工道具ひとつ取ってもこんな様子なのだ。
こまかい。
B4版の大きな紙面を活かし、迫力の見開きを繰り広げたかと思えば、上のような資料的なイラストを仔細に並べてみせたりする。このような絵のダイナミクスは、本書の大きな特徴のひとつだろう。
もう一点特筆したいのは、青がとてもきれいなこと。タイトルや見出し文字の微妙なグラデーションがなんともかっこいい。
絵と文とのバランス感覚も絶妙で、絵で示すこと、文で記すことの選択がうまい。情報量が多いのに簡潔、という新感覚。絵本でこんな表現が可能だったのかと思わせる一冊。
これがウィリアム・グリル初の絵本だって。
天才か。
当然おすすめです。