ヒグマの本(主に慟哭の谷)
屋外からヒグマが人を食む音と悲鳴が聴こえてくる。
以前「シャトゥーン ヒグマの森」をちらっと立ち読みしたらそんな感じの描写があって、「生きながら獣に食われるのってなんかウソくせえな。こわいし」と思い本を閉じてしまいました。
なぜならその頃は、「野生の獣は獲物を苦しませることなく絶命させる」なんて与太話を信じ切っていたからです。(マジで)
あと「魚は痛みを感じない」ってのも信じてたっけ……。アホか。魚だって痛いに決まってんじゃんか!よしんば哺乳類的な痛覚がないとしてもだよ?身を切られれば切られたなりの「命に関わる大ケガの予感!!」みたいな警報が魚体を駆け巡るもんなんじゃないの?それを人は痛みと呼ぶんじゃないの?フカヒレなんて二度と食わねえからな!!……うまかったけど。うまかったことは覚えておくけど。
話が逸れました。
獲物との力の差が小さければ、捕食者としてもさっさと締めないとヤバいというのは想像できる。ライオンだって、獲物(ウシ科)に蹴られて大ケガとかツノが刺さって大ケガとか絶対いやだろうし。
逆に言うと、捕食者に身の危険がないのなら別に食う前に殺さなきゃいけない理由もありません。ひれを切り取ったサメを生きたまま海に棄てるのと同じですね。むごいー。
世界最悪の獣害事件と言われる「三毛別羆事件」は、この残酷な事実を否応なく突き付けてきます。人間とヒグマの圧倒的な力の差に慄くばかり。
ウィキペディアの迫力ある記述も有名ですが、現在この事件の詳細を知ることができるのは木村盛武さんの「慟哭の谷」のお陰です。
事件の生存者に直接取材しており、現場の状況や仔細なエピソードが図を交えて記されています。誰がなんて叫んだか、なんてことまで書かれてる。克明に描かれた事実の合間で木村さんの感想が語られるのですが、取材する中で感じたであろう無念さや恐れが浸み出して来るようで、読んでいて怖くなります。
ただ怖いというだけでは、大勢の人が亡くなったこの事件の読み方としてやや不謹慎な気もしますが、
ヒグマこわい。
↓
こわいから遭遇したくない。
↓
遭遇しないためにあいつらの習性が知りたい。
↓
人とヒグマが出会わないウィンウィンな関係。
という結論が導きだせるので、ぜひぜひ大勢の人に読んでいただきたい。そしてヒグマのみなさんには、なにとぞ人里に降りてこないようにお願いしたい。うちの近所にも出るんだよ…。かんべんしてくれよ……。
読書がにがてーっていう人には、漫画版のシャトゥーンでもいいかも。ちょっとぶっ飛んでるけど、ヒグマのヤバさは充分伝わるはず。
とりあえず、
・時速60kmぐらいで走れる
・火を怖がらない
・木登りも得意
・執着心がやたらつよい
・車にはねられても平気
あたりの情報は義務教育で仕込んでほしい。
ところで、木村盛武さんの別の著書(タイトル忘れた)でヒグマの陰茎骨が紹介されていて、「陰茎骨ってなにそれしらない」ってなっていろいろ調べてみたんだけど、哺乳類はけっこうみんな骨入ってるんだって。骨がない方が珍しいらしいよ。我々は仲間外れだったのだ。
でもまあ、もし骨折したらとか考えたらない方がしあわせな気がするよ。
ときめき昆虫学
メレ山メレ子さんの「ときめき昆虫学」を読み終えました。
これ、田舎の本屋には置いてなくてな……。札幌に行って探すんだけど、まずどこのコーナーに置いてるのかなーってところからスタート。ペット、アウトドア、旅行など、ありそうなコーナーをひと通り漁るが見当たらず。人目を気にせず(気になるけど)女性エッセイコーナーも物色してみて、やっぱりない。どこにもないよー、と2週間ぐらい探して、澄川の大型書店コーチャンフォーでやっと見つけました。住んでる土地のど田舎っぷりを恨む。恨むぜ……。
大型書店には昆虫コーナーがちゃんとあるので、ムダに女性エッセイコーナーをうろつく必要もありません。面出ししている「ときめき昆虫学」第2刷を手に取り、その後、棚にささってた初版となめらかに取り替えっこ。(むやみな初版信仰)
帰宅を待たず書店内のミスドでドーナツをパクつきながら読む。
いろんな虫の話が全部で20章収められていて、どっぷり浸れます。コーヒーのおかわりも止まりません。内容も章ごとに飼育、観察、遊び、採集、研究、実験、食などさまざまで、読み終わったあとに目次を眺めると軽く混乱します。
我を忘れてひとつのことに熱中してしまう人の話はハズレなしだと思います。熱中している様子がそもそもおもしろいので。
読みながら、昆虫採集に命を懸けていた少年時代の気持ちがふつふつと思い出されてきます。実際命が懸かってたのは虫達のほうだが。あとはエーミールのことかな……。
「ときめき昆虫学」、おすすめです。