電気のピアノにお掃除ロボット
「エレピあったらよくない?」っていう話を友達が振ってきた。エレピか。ずいぶん唐突だな。
「ローズとかウーリッツァーとか、中古が意外と安いんだよ。エレキギターなんかは、ギターもアンプもペダルも、って集めていくとけっこう高いじゃんか。でもエレピはモデルによってはもうそれ1台で完結するからさ」
なるほど。確かに一理ある。検索してみると20〜30万円ぐらいでゴロゴロ落ちてる。いやいや、趣味で使うには高えよ、と思う方もいるかも知れないが、ちょっと考えてみてほしい。
これは本物なのだ。レコードで聴ける、本物のエレクトリックピアノの音なのだ。アンプとスピーカーを搭載しているモデルを選べば、弾いたらすぐあの音が鳴るのだ。目の付けどころがシャープ過ぎる発想だと言わざるを得ない。
そんな話をしていたら、もうあっという間に頭の中はエレピで満たされた。エレピが居間にあったらどうだろう。差し当たってはフェンダーローズとか。
壁際に置いてみる。アップライトピアノよりは奥行きがあるだろうか。楽器でありながら家具のようでもある、独特の存在感。本体から伸びたクロームメッキの脚の間をルンバがちょこまかと通り抜ける。電気のピアノにお掃除ロボット。いつか誰もが夢見たようなレトロフューチャー。
エレピ教室から帰ってきたこども達が、覚えたばかりの曲をさっそく連弾してみせる。ベンチソファの左に座った長男が、歪んだ和音をリズミカルに弾ませた。『レディ・マドンナ』だった。右側に腰掛けた弟は、床に届かない足をぶらぶらさせながら、主旋律を弾いている。節を間違えるとおもちゃみたいに笑う。兄も、つられて笑う。その様子を後ろから眺めていると、鏡面仕上げのコントロールパネルに二人の顔が映り込んでいるのが見えた。
楽しそうじゃん。めっちゃ楽しそうじゃん。
エレピのけっこう魅力的なポイントは、いちおうナマ音が鳴るところだ。どんな音なのか聴いたことはないんだけど。あとは外部出力もできるところ。ギター用のエフェクターも使えそうだし。
手始めにトイピアノにパッシブピックアップを取り付けて、エレピ化出来ないかと妄想していたのだが、目を付けていたカワイのトイピアノの発音体がアルミパイプだと知ってがっかりしているところだ。アルミじゃダメなんです!磁性体じゃないとマグネティックピックアップで拾えない。じゃあピエゾでいいかと言ったらそれもダメ。鍵盤のカタカタ音ばっかり拾いそう。発音体としてスチール製グロッケンを流用しようかとも考えたんだけど、けっこう高いし、メーカーもあんまり選択肢がない。
これはもう作るしかないだろうと、簡素なミュート機構を模索中。たぶんミュートできた方がいろいろ使えそうな気がする。
ウクレレみたいに、小さいけど楽器として一人前っていうものが出来たらいい。
エレピの好きな曲として、とりあえずノラ・ジョーンズを貼っておきます。ノラはウーリッツァーを愛用しているそうです。
Norah Jones - What I Am To You - YouTube
アルバムの2曲目だけど、映画の終わりみたいな雰囲気がすてきです。