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ジャガーノート

本や音楽の話を書いていこうと思います。

大森靖子と仮面ライダー

『ワンダフルワールドエンド』

監督:松居大悟

出演 :橋本愛蒼波純稲葉友

曲:大森靖子

 

 

前回『シン・ゴジラ』について書いたが(シン・ゴジラ - ジャガーノート)、実は特撮にはあまり馴染みがないまま過ごしてきた。小学生の頃に『仮面ライダー BLACK』『仮面ライダー BLACK RX』を楽しく観た記憶はあるが、特に平成ライダーシリーズを追いかけるわけでもなく大人になった。

 

ゴジラシリーズも同様に、冬休みに家族で狸小路の映画館に行き『ゴジラキングギドラ』を観たのは確かだし、その時劇場で買ったゴジラガシャポンはたぶんまだ実家にあるだろうが、そんなにハマらなかった気がする。

 

 

ところが2年前、いつの間にかこどもが仮面ライダーを見始めるようになった。まあ保育園の友達と話があったりするのかも知れないなと思い、子守りの一環のつもりで付き合って観てたら、めっちゃハマった。

 

今なお我が家で絶大な人気を誇る、平成ライダーシリーズ第16作目『仮面ライダードライブ』である。

 

まず特筆したいのは、『ドライブ』の脚本を担当したのが、あの三条陸さんだということだ。『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作者だと言えば思い当たる人も多いのではないだろうか。

ジャンプでドラゴンクエストのマンガを連載したい、という話が出た際、堀井雄二さんは「三条さんがやるんだったらいいよ」と快諾したらしい。

このあたりの話は詳しく書くと長くなるし、ググって出てくる以上の情報も知らないので特に書かないが、調べてみるとゾイド、特撮、アニメなど三条さんの幅広い活躍が見えてきて、とてもおもしろい。

 

ダイの大冒険』の連載は『ドラゴンクエストIV』の発売以前に始まった。それまで我々はあの世界で魔法がどんな風に放たれるのか、説明書や攻略本のわずかなイラストから想像するしかなかった。それをマンガで見事に表現した『ダイの大冒険』は革命的だった。もちろん三条さんの手腕だけではなく、稲田浩司さんの画力がなくては成り立たなかっただろう。メラとギラの違い、ギガデインの破壊力、そしてメガンテの切なさ……!!!!(←『ダイの大冒険』っぽい表現)

魔法だけでなく、アイテムの見せ方も優れており、鎧の魔剣や魔弾銃など、魅力ある武具が数々登場した。

 

マンガ原作者として活躍していた三条さんが特撮の世界に入ったきっかけは『魔法戦隊マジレンジャー』の、魔法に関するアドバイザーとしてだった。特にクレジットされておらず具体的な役割は不明だが、『ダイの大冒険』で示した魔法の系統建てや、「その魔法の名前は○○とカブるから使っちゃダメ!」とか、そんな感じのお仕事だっただろうか、と想像している。

 

特撮の監督が口を揃えて言うのが「三条さんは道具や設定の使い方がうまい」というものだ。仮面ライダースーパー戦隊シリーズには、劇中のアイテムを玩具化して販売するという命題が付き纏う。そのため脚本も、決まった時期に決まったアイテムを登場させさせなければならないなど、制約が多い。しかし三条さんはそのアイテムを軸に、ストーリーや戦いを巧みに展開させる。

 

中でも印象深いのは、仮面ライダーマッハが宿敵ゴルドドライブを撃ち破る場面。

 

マッハと共通仕様の変身ベルトを使用する仮面ライダーチェイサーがゴルドドライブに敗れたのち、マッハはチェイサーの遺した変身アイテムであるシグナルチェイサーをベルトに装填してチェイサーマッハに変身し、チェイサーの仇を討つのである。

ゴルドドライブにとどめを刺したのも、チェイサーが使っていたアックスタイプの武器だ。ギャグ的に盛り込まれていたかに思われた、アックスの攻撃準備完了の合図「イッテイーヨ」の間抜けな音声が、ダチの仇であり諸悪の根源でもあり、そしてなにより自身の実の父親でもあるゴルドドライブを討つ、マッハ/詩島剛の覚悟の表情と対位的に響き、観る者の心を揺さぶる。

「さよなら、父さん……。おれの未練」

『ドライブ』指折りの名場面だ。

 

そもそも共通仕様の変身ベルトというのは、完全にオトナの事情というかおもちゃ屋の都合というか。「下手に売れ残ってもアレだから、2号と3号のベルトはいっしょにしちゃいましょう!」という会議の中身が透けて見えるようだ。

それを逆手に取るかのようなチェイサーマッハである。「2人の力が合わさるとめっちゃ強い」という、実に少年マンガ的な展開が、共通仕様の変身ベルトによって無理なくもたらされる。

あんまり荒唐無稽というか、ぶっ飛び過ぎてると面白くない。その世界の法則を無視したご都合主義が頻発すれば、きっとこどもだって見抜くだろう。

 

 かくして三条さんの繰り広げる王道少年マンガ的ストーリー展開と、若手俳優らの熱演に完全に虜になり『仮面ライダードライブ』は、とても楽しかったのだ。

 

主人公、仮面ライダードライブ/泊進之介役の竹内涼真さんはドラマ『下町ロケット』や映画『青空エール』での活躍も記憶に新しい。

ヒロイン詩島霧子役の内田理央さんは今やMOREの専属モデルである。雑誌を開けば「あ、霧子だ!」とこどもが言う。

 

とすれば、なかなか表立った動きを見せない、仮面ライダーマッハ/詩島剛役を務めた稲葉友さんの活動が気になるのは当然だった。

モデルとしての活躍もうれしいが、やはり稲葉さんの魅力はあの陰りのある演技だろうと思う。特に、苦悩、動揺、怒りなど、ネガティブな感情表現に迫力がある。

他の出演作品も観たいと思い、辿り着いたのが、冒頭に書いた『ワンダフルワールドエンド』だった。

 

 

長くなったので次回に続きます。

 

 

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